漢方症例集

西洋医学の薬が強すぎて、老年期認知症のようになった

西洋医学の薬が強すぎて、老年期認知症のようになった
男性(72歳)
友人より父親が老年期認知症状態のように思えるので何方か精神科の先生を紹介してほしいとの依頼があった。
この三ヶ月程は話すこともなく、ただ、ボーとしていて殆ど寝たきりに近い生活をしている。腰が痛くて車に乗せるのも難しく病院にもかかれないと言うので、近所の往診をして頂ける先生を紹介した。
ところが、父親が自分は精神病ではないと言い、精神科受診を拒否。当院受診。
157センチ、57キロと肥り気味であるが、青膨れし、歩くのもおっくうという具合である。漢方医学の立場からは裏寒に陥っている可能性があると推察された。
20年来の高血圧で降圧剤と安定剤を服用し続け無事に定年を迎えたが生きがいが見つけれず、腰痛もあり次第に消極的な生活をしていたところ4ヶ月前より、ふらつき、ふるえが出現した。
主治医よりスポロチンを追加してもらったが思わしくないため3時間おきにスポロチンを服用するように指示され実行したところ益々ボーとして喋らず寝てばかりいるようになった。
血圧を測ると160-100で虚脈で脈拍が100、身体が緊張している。
おかしいと思い尋ねると血圧に対しての不安が強く、人前で緊張して血圧が異常に高くなる方であると家人が言う。
合点がいった。
定年が過ぎ、安定した生活の中で血圧は実際は高くなかったと推察された。お医者さんの前では緊張するため一時的に高血圧となり以前と同じように降圧剤、安定剤を投与されていた。
5月の時点で投与薬が強すぎてサブショック状態のような状況になったのに拍車をかけて投与薬剤を追加していた。さらに増量したため、益々同状態は増悪し老年期認知症のような状況を招いた、薬剤使用過誤による裏寒と判断した。
茯苓四逆湯を3日分投与し、投与されていたレ二ベースを半量だけ服用してもらい後の薬は中止とした。茯苓四逆湯をその場で一服服用してもらい顔色が良くなるのを待って刺絡を行った。
一週間後、受診
顔色が良くなり、スタスタ歩いてきた。血圧は130-70。
安定剤をやめて寝れない、腰が痛む、目やにが出るとのこと。炙甘草湯エキス顆粒を追加する。
2週間後、受診
寝れるようになり、腰の痛みも軽くなった。
血圧は120-70。レ二べースを服用すると反って頭がボーとすると訴えるので中止した。
2ヵ月後、受診
茯苓四逆湯を服用しながら炙甘草湯エキス顆粒を併用しているが血圧も安定し馬券を買いに行くまで回復した。
薬が強すぎると老年期認知症のようになることも
 
西洋医学の立場ではたいていの場合、いったん投与した降圧剤は死ぬまで投与、低く安定させるのが良いとの概念がある。
しかし、この患者さんのように老齢になり降圧剤が実際は不用なのに投与し続けた結果、薬が強すぎてサブショック状態になり老年期認知症のようになる方が意外に多いのではないだろうか。
老人には一般的に西洋医学の立場では多剤投与となりやすいが、西洋医学の立場からだけでは極端にならないと見つけにくいが、薬剤使用過誤とならないよう日頃から注意して出す必要がある。
 

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