漢方症例集

小兒のアトピー性皮膚炎、喘息に真武湯、小青竜湯、小建中湯

子供のアトピー性皮膚炎に真武湯、小青竜湯、小建中湯
男児(8歳)
某年6月初診: 生下時よりアトピー性皮膚炎があり、ステロイド軟膏を塗布していました。いつも冬になるとアトピーがひどく、夏には咳が出ていました。本年5月頃より喘息が起きるようになり、喘息を抑える西洋薬を飲まないと咳き込むようになってしまったとのこと。がっしりした体格で発育は良いのですが、煤けて浅黒い顔色で唇が青紫色です。皮膚はざらついているがアトピーは出ていません。臍下が冷え、疲れると鼻水、咳が出て、夜に喘息が出やすいとのこと。漢方医学の立場では裏寒、真武湯証と思われ、真武湯エキス顆粒 2.5 gを1日量として2回に分けて服用すると共に、アイスクリームやジュース、牛乳など、冷えるものや甘い物を控え、温かいご飯と味噌汁を主体とした伝統食を摂取するように指示しました。約1ヶ月して唇の色が明るくなり、顔色も良くなってきて、喘息の薬を飲まなくても咳き込むことが少なくなってきました。
3ヵ月後、受診: 再び夜にゼイゼイするようになり、鼻水がダラダラと出やすくなりました。食欲は良好、便通は2日に1回。小青竜湯証と思われ小青竜湯エキス顆粒 3 gを朝、夜2回に分けて服用し、真武湯エキス顆粒 2.5 gを帰宅後、服用することにしました。ゼイゼイが約2週間後に消失し、疲れた時の咳も少なくなりました。
6ヵ月後、受診: この頃より風邪をひいても喘息が全く出なくなり、咳も少なくなりました。例年のようにしもやけが出来るとのことで、裏を補い小児の体質改善効果の高い小建中湯エキス顆粒に変更することにし、小建中湯エキス顆粒 5 gを主として投与し、風邪をひいたときは以前のように真武湯エキス顆粒と小青竜湯エキス顆粒を服用することにしました。
この後、約2年経過を観察しましたが、喘息が出ることもアトピーが増悪することもありませんでした。
 
【解説】喘息に対する漢方薬としては,小青竜湯が一般的ですが,虚弱となった今日の日本人には小青竜湯は喘息発作を止めるには有効であっても,体質改善をして喘息が起きない身体にするためには真武湯や小建中湯などの生体の防御機能を高める処方の適切な併用が必要なことが多いのです。そうすることによってアトピーからも解放され,文字通り漢方で体質改善ができたときには,なんともうれしいものです。
 
 
 

ページトップへ