セリエは
「あらゆるものがストレッサーとなり生体にストレスを与える。生体はストレッサーの種類を問わずストレスを受けると同一の生体防衛反応を起こしホメオスターシスを保つ働きがある(汎適応症候群;G.A.S)」
と述べています。
これは、漢方医学であらゆるものが邪として生体に影響を与えるが、邪の種類を問わず三陰三陽で説明される同一の生体防衛反応を起こし汗、吐、下などにより邪を排除し、病を治すとするのと全く同じ理論です。

生体を丸いボールに例える(図1)と、外力(ストレス)を受けるとボールに何らかの歪みが生じます。
このとき、歪みを排除しようとする内力(生体防衛反応)が働き、歪みを治し、元の丸いボールに戻ります。(その際、内力がわずかに過剰となり、ボールが部分的に凸形に膨張するプロセスを経て、元の丸いボールに戻る。)
生体は丸いボールと同じで、受けたストレスを汗、吐、下、怒鳴る、笑う、泣く、あくびなど何らかの形で排除しなければホメオスターシスを保つことが出来ませんが、その排除には必ずエネルギーの放出を伴わなければ行われ得ない仕組みを持っています。
従って、治病の第一歩は代謝を高め、体温を上げることです。
例えば風邪をひいて発熱し、汗をかいたところ解熱し、気分がすっきりしたということは日常よく経験するところですが、生体は受けたストレス(ウイルスなど)を排除し、病を治すために代謝を高め、体温を上げエネルギーをため込み、発汗してエネルギーの放出を行っても良いと判断したレベルまで体温を上げた後に、発汗という形でエネルギーを発散すると共に、受けたストレスを排除し、解熱したということになります。
生体の代謝のレベルから、このプロセスをシェーマにする(図2)と生体はストレスに打ちのめされ、一時的に生体の防衛反応が衰え代謝レベルは下がりますが、すぐに生体の防衛反応が作動し、生体の代謝を高め…エネルギー発散できるレベルまで十二分に代謝を高めて…汗、吐、下などの形でエネルギーを発散するとともに、受けたストレスを排除し、ホメオスターシスを保ちます。
日常、生体はストレスを受けても、殆どの場合は生体が異常を感じないままに生体防衛反応が起こり、ストレスを排除してしまっていると考えられます。受けたストレスが生体に強く作用したり、長引いた時などに、生体は始めて異常を察知することになるのです。
ストレスに打ちのめされ生体の防衛反応が衰え、代謝レベルが低下している。
温裏剤の適用により、裏寒をとり回復させる。

生体がストレスに完全に打ちのめされ、生体の防衛反応が完全に働かなかった場合

生体がストレスに打ちのめされ、生体の防衛反応が働かない場合
セリエは汎適応症候群の第一段階を警告反応;A.R.と呼んでいますが、生体がストレスを受けたが、まだ生体の防衛反応が十分に働かず代謝が衰えている、病のごく初期に相当します。受けたストレスが強すぎて生体の防衛反応が全く働かない場合、ショック死(図5)となり、殆ど働かない場合はショック状態(図6)となります。
生体の防衛反応が正常に作動する場合でも、ストレスを受けた直後はストレスに打ち負かされ、生体の防衛反応が一時的に衰える時期が、時間の長短はあるが必ず存在します。
この時、まさに病気だという感じの関節や筋に沿って広がる痛みや、食欲減退を伴った胃腸障害などの病の初期に共通する非特異的症状を現し、組織学的に副腎皮質の肥大、胸腺やリンパ腺の萎縮、胃十二指腸の内壁に出血や潰瘍が見られる、とセリエは述べています。
寒気がしたり、喉が痛かったり、体がだる重かったりして風邪をひいたかなと思う時はセリエの警告反応の時期にあると言えますが、民間療法では生姜湯や卵酒を飲んだり、足浴をして体を温めます。
民間療法の生姜湯、卵酒などに相当する漢方薬は温裏剤です。
漢方医学の立場でこの時期を観察すると、心臓に近かったり、体の芯を投影していると考えられる心下部や左上腹部、背部の肺愈や心愈の辺り、臍の辺りや臍下などが他の部位と比較して冷たいのを触知し、生体防衛反応が衰え、生命維持に必要な代謝の低下をみる結果として裏寒に陥っていと判断します。

身体を温めて自然治癒力を高める…生姜・附子