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漢方治療入門講座

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気滞と気の偏向

気滞

気が滞っている(気が滞れば血・水のめぐりも停滞する)
気鬱・神経症・心身症・欝状態を引き起こすばかりでなく、頭痛・肩こり不眠など様々な症状も出現する。
(理)気薬・(行)気薬…木香・香附子・烏薬・厚朴・陳皮・枳実(広義には桂枝・紫蘇葉などの解表薬も入る)
(理)気剤・(行)気剤とは漢方のアロマテラピー薬
  1. 漢方の精神安定剤
  2. 強く発汗させてはいけない虚弱者向きの軽い解表剤(現代医学の解熱鎮痛剤に相当)
  3. 裏寒、気虚甚だしい時は使用禁忌
香蘇散(香附子・紫蘇葉・甘草・陳皮・生姜)
加藤清正が篭城した時、陣中の医師が兵士の気鬱にしきりに用いたと伝えらるように、気もふれるような激しい症状を軽快させることがある。
  • 更年期の婦人の頭痛・不眠・耳鳴り・生理不順などに良く使用
  • 曇天になったり、気を使ったり、人込みで極端に調子が悪くなると訴えるのを目標
  • 風邪 頭痛 腹痛 蕁麻疹 アレルギー性鼻炎などにも用いる
半夏厚朴湯(厚朴・紫蘇葉・半夏・茯苓・生姜) 別名:大七気湯
咽中炙臠といい咽喉または胸骨の裏のところに梅干しの種のようなものが引っ掛かっているような異物感を目標とするとされている。
  • 胃内停水があり、これが上下に流れて顔面や手足の虚性の浮腫をきたす
  • 厚朴は胃を温めながら下す薬で、あまり虚弱なものには禁忌である
  • 気分が重くて気分がふさいで、谷底に沈むような、滅入るような気分のものに使用
  • 喘息 気管支炎 陰嚢水腫などにも使用
六君子湯(四君子湯+陳皮・半夏)
香砂六君子湯(六君子湯+香附子・かっ香・縮砂)
飲食物をとり過ぎ、身体を動かすことが少なく、胃がつかえ、気欝のある現代人のファーストチョイスの薬として良く使用。多くは痩せ気味の人に適応が多い
  • 風邪 咳 胃腸のトラブルにも用途が広い
茯苓飲(茯苓・白朮・人参・生姜・橘皮・枳実)
茯苓飲合半夏厚朴湯
胃部停滞膨満感、げっぷを訴え食べ過ぎていたり、あるいは胸がつまり塞がって食べれないものに使用
平胃散(厚朴・陳皮・蒼朮・大棗・甘草・生姜)
胃に宿食と水が停滞して胃の不快感のある、舌苔厚く、膩苔
  • 食べ過ぎ、太り過ぎとなっている人に適応が多い
帰脾湯(四君子湯+木香・黄耆・酸棗仁・龍眼肉・遠志)
心虚して気鬱となっているものに使用、過多月経などにも使用

気の偏向

漢方医学では五臓六腑にそれぞれに神が宿り、臓腑の機能を整えると共に各臓腑には固有の感情を内蔵していると考えています。また病気の内因として、七情といって極端な感情の逸脱が病気を引き起こすことを示し、それぞれに的確な治療薬方を用意しています。現代医学の心身症の概念、治療法より遥かに優れていると思います。

  1. 『肝は将軍の官、謀慮出ず胆は中正の官、決断出ず』
    肝胆の気が充実している人は筋骨逞しく、集中力があり快活明朗で行動力と決断力あるタイプであるとされます。しかし、肝気を高ぶらせ過ぎると肝気欝血、肝火が生じ、肝に内蔵している忿怒の感情が爆発して訳もなくいらつく、怒鳴る、手が震え、挙げ句の果てには肝を破り、自制心を失い、鬼と化して犯罪を犯したり、精神病・不眠症となったり、臓器を傷つけて高血圧・心臓病・胃潰瘍など様々な病気を引き起こします。肝気の異常興奮による病気には、肝実熱を冷ます瀉火剤が用意されています。反対に肝気が衰える(肝虚)時には集中力が鈍り、気力が衰え疲れやすくなります。また、高血圧・腰痛症などの病気の原因となることもあります。肝虚により引き起こされた病気には肝の補養剤を投与します。四物湯が代表的です。
    抑肝散(柴胡・川きゅう・当帰・釣藤・甘草)
    小児の癇の虫の薬として、夜泣き・チックに用いるばかりでなく、広い年代の諸疾患にも使用される。
    四逆散(柴胡・枳実・芍薬・甘草)
    肝気欝結の代表薬
    竜胆瀉肝湯(車前子・黄ごん・沢瀉・木通・地黄・当帰・山梔子・甘草・竜胆)
  2. 『心は君主の官、神明出ず』
    喜びの感情を内蔵している。バランスを崩し過剰になると妄想・幻覚を来し気が狂う。虚すと憂え、神経衰弱となる。
  3. 『脾は倉廩の官、五味出ず』
    思の感情を内蔵している。バランスを崩し過剰となると気が狂う。虚すと思い煩い、食欲なく、食べ物の味が分からなくなり、神経衰弱となる。
    大承気湯(大黄・枳実・芒硝・厚朴)
    精神病に使用の機会
    調胃承気湯(大黄・芒硝・甘草)
    胃の滞りを整えることにより、気の巡りを良くする。
    三黄瀉心湯(大黄・黄連・黄ごん)
    精神病に使用の機会
    半夏瀉心湯(半夏・黄きん・乾姜・人参・甘草・大棗・黄連)
    帰脾湯(四君子湯+木香・黄耆・酸棗仁・龍眼肉・遠志)
    思慮過度にして心脾を労傷し血を摂むることあたわざる時に使用
  4. 『肺は相傳の官(君主に付き添う高官)治節出ず』
    慮の感情を内蔵している。肺がしめつけられると悲しみやすくなる。悲しみ過ぎると肺を破る。
    甘麦大棗湯(甘草・大棗・小麦)
  5. 『腎は作強(作用を強める)の官、伎巧出ず』
    恐の感情を内蔵している。腎を虚すと驚きやすくなる。恐れ過ぎると腎を破る。ストレス病にかかりやすい。
    桂枝人参湯(桂枝・人参・甘草・乾姜・白朮)
    八味腎気丸(桂枝・附子・地黄・山薬・山茱萸・沢瀉・茯苓・牡丹皮)

気の上衝

収まるべき気が逆行し、上半身(特に首から上)に気が過剰となっている。
顔が熱い、のぼせる、ふらつく、顔がほんのり赤み、眼の充血・しょぼつく、耳が赤い、耳鳴り、頭痛、不眠、イライラ、肩こりなどの症状が出現する。
治療薬方は桂枝湯(桂枝・芍薬・甘草・生姜・大棗)など桂枝湯類。

気の上衝が著しい場合は「上熱下寒」となり、桂枝湯に冷えとりの薬が加味された厥陰病の方剤である、当帰四逆加呉茱萸生姜湯の適応となり、上衝の症状に加え、尿意が近いなど下半身の冷え症状が出現する。

「上盛下虚」となり、八味地黄丸が代表的薬方であるが、上衝の症状に加えて体型的に上半身が太り、下半身が痩せて、お尻の筋肉が落ち、足が細く、腰痛、膝痛、足弱、インポテンツなど下半身の虚の症状が加わる。
中年以降の諸疾患によく用いる。

冷えのぼせ
冷えのぼせ
頭痛、頭がふらつく、めまい、眼がしょぼつく、顔のほてり、肩こり、不眠、イライラ、クヨクヨ、手足が冷たい、尿意が近い、高血圧、血の道などを起こす。


まとめ

  1. 機能の不足
    気の不足…気虚―補気剤
  2. 機能の障害
    気の滞…気滞―(理)気剤
    広義には解表剤も入る
    気の偏向・気の有余…内火を生じる―瀉火剤
    (清熱瀉下剤・柴胡剤…駆於血剤)
  3. 機能の逆行
    気逆…収まるべき気が逆行する
    咳・げっぷ・しゃっくり・悪心・嘔吐
    気陥…中陥下陥…内臓下垂、子宮下垂、脱肛、頻尿、全身倦怠、筋力無力
    気の上衝(上気・気の上逆)
    上熱下寒という病態となり、長引けば上盛下虚となる
気血水の関係
気が滞れば水が滞り、血が滞る。
どの要素が強いかで 気血水 と病因を分けている。