漢方治療入門講座

攻撃剤について

漢方治療について攻撃剤

攻撃剤とは
漢方医学における治療薬方は、防衛剤と攻撃剤とに大まかに分類することができます。このセクションでは主に攻撃剤について説明します。
(防衛剤については「漢方治療について‐防衛剤‐」を参照)
攻撃剤とはいわゆる陽病に使用される薬方で、汗・下・中和・駆瘀血して積極的に受けた、病邪(ストレス)を排除しようと働きかける薬方です。
攻撃剤は現代医学の解熱鎮痛剤・消炎剤などに相当しますが、現代医学にない独特の概念に基づいて解表・瀉下・解毒・中和・駆瘀血を行い、現代医学では得られない治病効果を上げることができます。
攻撃剤はごく大雑把には熱とりの薬と言えますが、治病効果が期待できる反面、攻撃的治療が生体に強すぎれば代謝を下げ裏寒に陥らせたり、身体の力を奪って脾胃を弱らせてしまうことがあります。
攻撃剤の使用に際しては、漢方治療の治療原則を念頭において治療を行う必要があります。
攻撃剤の種類とその役割
  1. 発汗してストレス(病邪)を排除
    解表剤[麻黄・葛根)…葛根湯・麻黄湯
  2. 下してストレスを排除
    清熱瀉下剤[大黄・黄連・芒硝・石膏)…調胃承気湯・黄連解毒湯
  3. 中和してストレスを排除
    柴胡剤[柴胡) …小柴胡湯・大柴胡湯
  4. 駆瘀血してストレスを排除
    駆瘀血剤[桃仁・牡丹皮・水蛭)…桂枝茯苓丸・桃核承気湯杏林ワコー薬局 伊藤康雄氏の分類
     
     
     
     
     
     
     
     
    解毒剤について
解毒剤とは
解毒剤(攻撃剤)には

 
1.十味敗毒湯に代表される柴胡の配された柴胡剤。
2.黄連解毒湯に代表される黄連・大黄などが配された清熱瀉下剤。
3.桂枝茯苓丸や通導散に代表される駆瘀血剤。
4.宣毒発表湯(升麻葛根湯+α)のような葛根や升麻などの配された解表剤。
 
 
漢方医学には現代医学に無い(毒)の概念と治療法があります。
一般的には,漢方医学でいう解毒剤は,十味敗毒湯や柴胡清肝湯など,いわゆる解毒証体質に用いて排毒を図る,「柴胡剤」を指します。しかし,その他にも黄連解毒湯・人参敗毒散・宣毒発表湯など「毒」という名のついた処方があります。西洋医学における毒は毒物を指しますが,漢方医学における毒とは,生体の正常な生理的機能を阻害しているものを意味します。水毒・血毒・気毒などの表現がありますが,これらは受けたストレスが排除されず,生体に残存して,正気の運行を阻害している状態を指していると考えられます。漢方医学には汗・吐・下・中和といった手段で,毒(ストレス)を積極的に体外に排出させる解表剤や清熱瀉下剤,柴胡剤,駆瘀血剤といった,病邪を攻め,身体から除くことを目的とする方剤(攻撃剤)があります。私は柴胡剤だけでなく攻撃剤全般を解毒剤と捉え、これらを用いて適切な毒の排出を意図して診療にあたっています。
裏寒や体力低下により生体機能が十分に作動せず,排毒経路が閉ざされている場合には補剤で生体の機能を補い,生体の自然排毒を促す方剤(防衛剤)として温裏剤・脾胃剤・補腎剤・滋陰剤を用います。これらも広義の解毒剤といえます。漢方治療を適切に行うことができれば,体内に毒は残らず,病気を発症する前よりも,健康的な状態となります。すなわち,漢方治療は生体にとってきわめて合理的な治療法であるといえます。
一方、西洋医学では,病理学者であるウィルヒョウが,疾患の本体は炎症(発赤・腫脹・疼痛)であると看破し,炎症による各部の疾患を肝炎・胃炎などと命名しました。抗生物質.ステロイドなど,炎症を強力に抑える薬物を投与することで病気を華々しく制圧してきました。しかし,その治療法を漢方医学の立場からみると,病気を抑え込むことはできても,体内には毒を溜め込んでいます。しかしながら,生体が自然に排毒を図っているため,発病に至らずに済んでいるものと考えられます。その上,今日の生活環境は大きく変化し,食品には農薬や添加物が使われ,合成洗剤などが巷に溢れ,空気はPM2.5に代表される物質で汚染され続けています。加えて今日は飽食や,サプリメントなどの過剰摂取のために,解毒能力を超えて毒を身体に蓄積し,負担となっています。いわば私たちは体の外も中も毒まみれの生活を送り,排毒機能が疲弊しきっています。西洋医学には,漢方医学における解毒という概念も治療法もありません。今日ほど解毒剤を必要とするときはないと思います。近年の難病やがんなどの多発も「毒」を溜め込みすぎていることが一因と思われます。今日の日本人は想像を超えて虚弱化しているため,ダイレクトに解毒を図る「攻撃剤」を使用できないことが多いのが実情です。補剤で生体の機能を補い,生体の自然排毒を促す「防衛剤(温裏剤,脾胃剤,補腎剤,滋陰剤)」を,まず使用せざるをえないことが多々あります。
 
 
 
 
 
 

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